非日常を感じに-東欧の真珠ハンガリー・ブタペスト
成田から約12時間、ハンガリー・ブタペストに赴いたことがある。東欧の真珠と呼ばれる土地だ。情緒ある建築物、洒落たカフェ通りなど、コンパクトな街並みには歴史の匂いが漂う。
街の象徴・眼鏡橋や王宮が目玉である。東欧の魅力は、なんといっても西欧よりはより素朴である点だ。先進国らしさにはやや欠けるが、かといって何かが遅れているわけでもない。そのほどほどな感じに魅せられる。
1人で赴いた初めての東欧。もちろん貧乏旅行で、ホテルではなく安宿に泊まった。なんとか辿りついたドミトリーでは、一日1800円程度で一般的な暮らしが営める。着くや否や主人が暖かいコーヒーを入れてくれた。ほっと一息、旅の疲れが癒される瞬間だった。
そのドミトリーには連日「何か」を探し求めている旅人達が集う。
小奇麗とは言えない恰好の脱サラ風の男性、同年代の学生グループ、身元不詳っぽい若者。「次の目的地はインドなんだ」と、大陸を跨ぐ次元の違う壮大なビジョンを語る、そのきらめく眼に見つめられると、ひどい眩暈に似た感覚に襲われる。
連日人が入れ替わり、混血のような空間だった。漂う旅人臭。それらに慣れない、また染まりきれない私は、居場所のない浮遊感に襲われた。
だが、その中で唯一私がほっとできた場所、それは同室だった大学生のバックパッカーとの時間だった。滞在三日目の夜、彼女が、夜の眼鏡橋の夜景を見に誘ってくれた。ドナウ川はその暗闇の中でもやはり確かに流れていた。雪の透明感が昼間以上によく映える。その川の向こうには、各国が続く。絶え間ない流れのように、見える情景や感情は変わるものかもしれない。人との出会いが、これほどまで暖かいものかとしみじみ感じたものだった。
彼女との別れは突然やってきた。翌朝目覚めると、既に彼女の姿はなかった。隣国に向かって旅だったらしい。また、慣れた手つきでパッキングしたのだろう。彼女のつける香水が香る部屋の中で迎えるハンガリーの朝。珍しく大雪が降る朝だった。